相 続 Q&A13 
遺産分割協議の対象とならない相続財産(遺産)
 

相続についての法律手続やよくあるトラブルや疑問に具体事例を用いてわかりやすく解説します。

遺産分割の対象とならない財産・対象となる財産

遺産分割協議の対象とならない相続財産(遺産)を遺産分割した場合、有効性はどうなるのか?

相続Q&A>Q&A13

           

 

 Q13 

私の母が亡くなりました。

相続人は、私Aと妹(B)弟のCです。
先ず、被相続人である母の預金口座の金額について協議しようとしたら、法律の勉強をしている妹が「兄さん、預貯金は遺産分割の対象にすることはできないのよ。
預貯金は債権(銀行に貸し付けている金銭であって、銀行に対して(預けている金銭を払い戻してもらう権利である)払い戻し請求権)だから、相続開始時点で当然に相続分に応じてA,B,C3人に対して権利を取得することになるのよ、最高裁の判例で決まっているのよ」
といわれました。

「オマエは弁護士か」と思いましたが、一体、妹の言うことは正しいのでしょうか?

遺産分割協議で自由に取得分を決められないのでしょうか?

           


           

遺産分割協議の対象となる財産・ならない財産
遺産分割の対象とならない財産の存在

※ 平成28年12月19日に出された最高裁の決定により、「預貯金が遺産分割の対象となるかならないか」に関する回答の趣旨が下記の説明と異なっています。
解説の最後に記載しています。是非、最後までお読みください。

相続財産に該当する財産であっても、遺産分割協議の対象とならない財産があります。

そのなかのひとつが「可分債権」です。
可分とは文字通り分けることができることで、可分債権とは分けることができる性質の給付を目的とする債権です。

具体的に言えば、預貯金債権が該当します。
預貯金債権とは銀行に預けた金銭を、銀行に対して払い戻してくださいと請求する権利です。

例えば、預金が180万円あったとしてA,B,Cの3人で等分に分けるとひとり60万円づつの債権にわけることができ、A,B,Cそれぞれが個別に銀行に対して「60万円を払い戻してください」と請求できるのです。

妹Bさんのいうように最高裁の判例で「可分債権は、遺産分割を経ることなく、法律上当然に分割されて、各相続人がその相続分に応じて当然に権利を取得する」とされています。

つまり、可分債権は遺産分割の対象とならないということになります。
法理論的に言えば、妹Bさんの主張は正しいと言うことになります。

※ 平成16年4月2日最高裁判決で「預貯金は、遺産分割の対象とならない」とする判決が出されましたが、その後、平成28年12月19日最高裁判決で「預貯金は、遺産分割の対象となる」とする判決が出て、上記判例理論は変更されました。
よって、現在では、銀行に預けている「預貯金」も遺産分割の対象となります。

※平成29年4月6日、定期預金、定期積み金についても遺産分割の対象となるとする最高裁判決がでました。

           

           

遺産分割の対象とならない財産

「相続財産とならない財産」

遺産分割の対象財産と対象とならない財産を考える場合に、 「相続財産とならない財産」がありますがこれは「遺産分割の対象財産」とはなりません。

遺産分割とは相続財産を相続人が分割するものですからこれはわかりやすいですね。

「相続財産とならない財産」とは「生命保険金・死亡退職金」「祭祀に関する財産」「年金」「持分会社等の社員たる地位」等です。
「相続財産とならない財産」について詳しくはQ&A7をご覧下さい。

「相続財産となる財産」

相続財産ではあるけれども遺産分割の対象とならない財産としては前述の可分債権の他に「債務」があります。

借入金や保証金等の「債務」の負担について「債権者」の同意なく遺産分割で負担者や負担割合を定めることはできません。

「債権者」からすると資産・財産の持たない者が債務者になってしまうと、回収ができなくなり、不利益となることなので、債務者側で一方的に決めることができないのです。

           

相続債務を遺産分割協議の対象にした場合

もしも被相続人の債務を債権者の同意を得ずに遺産分割した場合、債権者に分割の結果を主張することはできません。

           

遺産分割の対象となる財産

原則、相続財産は遺産分割の対象となります。

しかし、前術の可分債権(「預貯金債権」を除く)のように相続財産であっても「遺産分割の対象とならない財産」もあります。

預貯金と同様に過去の最高裁判決で、国債、(指図型)投資信託等の債権も遺産分割の対象とされていなかったのですが、これも、平成26年2月25日最高裁判決により、遺産分割の対象とされる旨の判示がされました。

また、相続財産ではないが、現実に遺産分割の対象となっているものもあります。(後述)

           

相続財産ではないが、現実は、遺産分割の対象となっている財産

相続開始後、遺産分割までの間に発生した財産である「相続財産から生じた果実」の問題があります。

果実とは法律用語で物から生ずる収益のことです。被相続人が所有していた樹木から生じる果実(例、りんごの木から生じたりんご)も言葉通り「果実」ですが、被相続人が所有していたアパート等の収益物件からの収入である家賃も「果実」です。

相続開始後、遺産分割までの間に発生した「果実」は相続開始後発生した財産なので、相続財産にはならないので遺産分割の対象とはなりません。

しかし、これも(預貯金と同様に)現実には遺産分割の対象とされています。

※ 判例の変更

平成28年12月19日 最高裁判所が「預貯金と遺産分割」に関する「決定」をしました。

内容は、上記で説明した「平成16年出された最高裁判決」の内容を覆すもので、「相続財産である預貯金は、当然に相続人に対して分割されるので、遺産分割の対象とならない」としていた同判決を変更して、「預貯金は遺産分割の対象となる」との内容の決定を出しました。

※詳しくは裁判所HP「平成28年12月19日最高裁決定」をご覧ください。

よって、現時点(平成29年)では、上記Q&Aの回答は上記解説と反対の内容となり「預貯金は遺産分割の対象となる」となります。

           

相続財産と遺産分割協議の対象となる財産

     
亡くなった方の 相続財産と  
遺産分割協議の対象 
名義の財産 なるか となるか
       
可分債権(預貯金、国債等を除く) なる ならない
     なる
預貯金
・現金
なる ※最高裁平成28年
  12月19日決定
債務 なる ならない
     なる 
国債・投資信託 なる ※最高裁平成26年
    2月25日判決
株式・有価証券 なる なる
相続財産とならない財産 ならない ならない
相続開始後発生した天然果実※1 ならない ※3
 相続開始後発生した利息、家賃等※2 ならない ※4
 
※1
被相続人の財産である樹木から発生した果実
(例:柿の木に実った柿)
農家でミカン、りんごを栽培、多額の代金が入る →実益あり
※2
法律用語では法定果実といいます。
被相続人の財産であるアパート等
賃貸物件で発生した家賃や貸付金
の利息  
※3 
法律的には対象とならないが現実
には遺産分割の対象となっている。
※4 同上

           

遺産分割協議の意義や「遺産分割協議のこんなときどうする?」その他遺産分割について詳しく解説しています。
遺産分割」をご覧下さい。

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